ある道場に、集中力が欠けている少年拳士がいました。叱っても怒っても、彼は集中することができず、授業中に他のことを考えているような子でした。

「ここは幼稚園じゃない！」と僕はいつも怒っていました。時には体罰も与えることもありました。

どんなに教えても、彼は鼻をほじったり関係のないことを話すだけでした。

正直なところ、彼と向き合うことは毎回苦痛でした。怒っても改善されないため、僕は教える際にリラックスし体をゆるゆるに緩ませ、一緒に遊ぶような雰囲気で、指導することにしました。

すると、彼は少しだけ僕に興味を持ち始め、言うことを少しは聞くようになりました。

後で知ったところによると、これはユーティライゼーションと呼ばれる一種の催眠術のコールドリーディングで、牛を小屋に入れるために逆方向に尻尾を引っ張る技術と似ていたそうです。

彼がふざけるために、僕は逆手にとって一緒にふざけたのです。

これは予想以上の効果を発揮しました。僕は自信を持って言えますが、僕の幼児教育は他に比べても優れていたのです。

ただし、後で彼の親が彼を病院に連れて行ったところ、多動性障害と診断されたそうです。「その子には悪いことをしたかな？」と後で思いました。

しかし、貴重な経験でもありましたので、「そんなこともあって良かったかな」と今では思っています。