(このページは2026年10月6日に執筆されました。)
 
Hello everyone!黒帯兄さんこと八木橋ショーガックです。
 
今日は、ボーカル修行の中で引っかかっていた話を、整理してみたいと思います。
 
「一般男性の地声最高音の平均は、mid2G(G4)あたり」
 
歌の音域を調べると、よく見かける言い方です。
 
僕も「mid2G、mid2G#なら普通に出る」と言ってきましたが、
この「平均」という言葉が、どうにも腑に落ちませんでした。

「平均」と書いてあるけど、計算された平均ではなさそう

調べてみると、この数字の出どころは、ボイストレーナーの経験則や、Q&Aサイトの回答が中心でした。
 
全国の男性を無作為に調べて、平均を計算した調査は、見つけられませんでした。
 
つまりここでいう「平均」は、統計用語というより、

「だいたいこのあたり」という目安の言葉だと考えた方が正確です。
 
しかも、同じ話題でも意見が割れています。
  • 「一般的にはG4あたりと言われるが、もっと低いのでは」という疑問
  • 「ノイズなしで出せるのはmid2E〜Fくらい。mid2F#からは力に頼る人がほとんど」という声
  • 「G4〜A4が最初の壁。歌わない人はここで引っかかる」という声
「出せる」の定義を、ノイズ混じり・力みありでもOKにするか、

きれいに歌える音に限るかで、数字がmid2Gにもmid2Eにも動きます。
 

平均値・中央値・最頻値は、別のもの

ここで、3つの言葉を整理しておきます。
  • 平均値:全員の値を足して、人数で割ったもの。極端に高い人・低い人に引っ張られる
  • 中央値:全員を低い順に並べたときの、ちょうど真ん中の人の値
  • 最頻値:いちばん人数が多い値
「数が多いから正確」と言えるのは、最頻値の話です。
 
中央値の強みは、極端な値に左右されにくく、「普通の人」を表しやすいことです。

「高い人が平均を押し上げている」は、そのままでは言えない

最初は、こう考えました。「地声最高音が高い人が、平均を引き上げているのではないか」と。
 
でも、平均が中央値より大きくなるのは、極端に高い値が長く伸びている分布のときです。
 
地声の限界のように、体の仕組みで上限がある量では、極端な外れ値はそんなに多くありません。
 
それよりも大きそうなのは、サンプルの偏りです。
 
「ヒトカラ行く人ならG4以上は出る」という回答があったように、
 
こうした数字を出す人は、カラオケ好き・歌に自信がある人に偏りがちです。
 
歌わない人は、そもそも自分の地声最高音を測りません。
 
だから、数字が高めに出やすい。

フェルミ推定で、架空の表を作ってみた

そこで、仮定を置いて、フェルミ推定で表を作ってみました。
 
これは架空の表です。実際の調査データではありません。
 
手元で集めた目安(Q&Aサイトやボイストレーナーの解説)に寄せて、分布を仮置きしたものです。
仮定は、次のとおりです。
  • 一般男性:日本の成人男性約5,000万人。歌わない人も含める
  • 配信・CDレベル:成人男性の約0.2%(約10万人)が何らかの形で音源を配信している、と置く
まず、仮定した分布です。各音を地声最高音とする人が、何%いるかを置きました。
 
地声最高音
一般男性
配信・CDレベル
mid2C〜D#
39%
0%
mid2E
16%
0%
mid2F
14%
6%
mid2F#
11%
9%
mid2G
9%
21%
mid2G#
5%
17%
hiA
3%
19%
hiA#
1.5%
10%
hiB
0.8%
8%
hiC以上
0.7%
10%
 
「実測」ではなく、あくまで仮置きの数字です。
 
この分布から、平均値・中央値・最頻値を計算すると、次のようになります。
 
 
一般男性
配信・CDレベル
平均値
mid2E付近
mid2G#付近
中央値
mid2E
mid2G#
最頻値
mid2E
mid2G
mid2G以上の割合
20%
85%
hiA以上の割合
6%
47%
 
この仮定の範囲で言えることは、次の2つです。
  • 一般男性では、平均・中央値・最頻値がほぼ同じ位置に集まる。「高い人が平均を押し上げる」ほどの歪みは出ない
  • 配信・CDレベルでは、中央値がmid2G#まで上がる。「mid2Gが平均」と言われる数字は、歌う人・プロの層を基準にした目安だと考えると、辻褄が合う

自分の位置は、どこか

僕の感覚では、こうです。
  • mid2Gまでは、チェストミックスで出る
  • mid2G#から、張る意識が必要になる(ファーストブリッジ)
  • hiAまでは、実用範囲として使える
この表の仮定が当たっているなら、mid2Gを地声で出せる男性は、一般では5人に1人。
 
歌う人の中でも、上位寄りの位置です。
 
だから、「mid2Gは声が高い人」という感覚の方が、数字としても無理がありません。

数字は目安として使う

この表は、あくまで考え方の練習です。
 
分布の形も、人数の仮定も、僕が仮置きしたものです。
 
「配信・CDレベル」の定義を変えるだけで、数字は大きく動きます。
 
大事なのは、数字そのものより、何を基準にした数字なのかを確かめることだと思います。
 
誰が測ったのか、どんな人が集まったデータなのか、「出せる」の定義は何か。
 
そこを見ずに「平均はmid2G」と受け取ると、自分の位置を見誤ります。
 
淡々と、自分の声を測りながら、積み重ねていきます。
 
以上、黒帯兄さんこと八木橋ショーガックでした。